「お金があれば幸せになれる」――そう信じている人は多いかもしれません。けれど本当にそうでしょうか。近年、世界的に注目されているのが「ファイナンシャル・ウェルビーイング」という考え方です。
そもそも「ウェルビーイング」とは、1946年のWHO憲章前文に由来する言葉で、肉体的・精神的・社会的にすべてが満たされた状態を指します。その一要素として、米ギャラップ社が挙げたのがお金にまつわる充足、つまりファイナンシャル・ウェルビーイングなのですね。
これは、目先の支払いに困らず、将来のお金にも不安がなく、人生を楽しむための選択を自由にできる状態のことです。整理すると、「安心感」と「選択の自由度」、そして「現在」と「将来」という4つの視点で捉えられます。毎月の支払いを管理できているか。万一に備えがあるか。今を楽しめているか。将来の目標に向け準備が進んでいるか――。この4軸で自分を見つめてみると、現在地が見えてきます。
ただし注意したいのは、「現在の充実」と「将来の備え」がトレードオフになりやすい点です。今を楽しみすぎれば将来が不安になり、節約しすぎれば今が味気なくなる。だからこそ、バランス感覚が問われるわけです。
お金が増えれば満足度も上がる、とは限らない
興味深いのは、年収と満足度が比例しない事実です。年収300万円の人が400万円になったときの喜びは大きいでしょう。けれど2000万円が2100万円になっても、同じ感動は得にくいもの。さらにある調査(MUFG資産形成研究所、2023年)では、金融リテラシーが高い人は資産が少なくても満足度を保てる、という結果が示されています。
つまり、満足度を左右するのはお金の量だけではないということ。「いつ・何のために・いくら必要か」を把握し、自分なりのライフプランを描く力こそが鍵を握ります。「足るを知る」という言葉が、ここでは深く響きますね。
人生のお金は3つの時期で考える
私たちのお金の流れは、大きく3つに分けられます。働いて資産を築く「資産形成期」、定年後の「移行期」、そして年金を中心に暮らす「資産活用期」です。前半は勤労収入を得つつ資産を育て、後半は年金と資産の取り崩しで支える。この見通しを立てるだけで、漠然とした老後不安はぐっと和らぎます。
まずやるべきは、正確な手取り収入の把握です。源泉徴収票の支払金額から税金と社会保険料を引いた額が本当の手取り。その8〜9割で生活し、残りを資産形成へ回すのが一つの目安とされます。
幸せにつながるお金の使い方
最後に、使い方の話を。経済学者ロバート・フランクは、他人との比較で価値が生まれる「地位財」と、それ自体に価値がある「非地位財」を区別しました。高級車や肩書きの満足は一時的ですが、健康や経験から得る幸福は長続きします。モノよりコト、そしてその瞬間にしか味わえない体験へ――お金の使い道そのものが、幸せを左右する時代になってきたのかもしれません。

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