遺品整理と「悲しみ」のこと。残された人が知っておきたいこと ♯266

身近な人を見送ったあと、待ったなしでやってくるのが「遺品整理」です。同時に、自分でも気づかないうちに、心と体が大きく揺さぶられることもあります。私自身、親族を見送った経験から「もっと早く知っておけば」と思ったことがいくつもありました。今日は、遺品整理の進め方と、その裏側にある「グリーフ」という心の動きについて、整理してみたいと思います。

遺品整理、自分でやる?業者に頼む?

残された家族がまず向き合うのが遺品整理です。最近は、家族の負担を減らそうと、元気なうちに自分で片づける「生前整理」に取り組む人も増えています。物が減れば部屋が片づくだけでなく、室内での転倒予防にもなる——そんな副次的なメリットもあるそうです。

気力・体力・時間があれば自分で行うのが一番安く済みますが、現実にはなかなか難しいもの。そこで頼りになるのが専門業者ですが、ここで知っておきたいのが「業者にもいろいろある」ということでした。

業者の「もともとの本業」を見る

調べてみると、ひとくちに遺品整理といっても、母体となる本業によって対応がかなり違います。不用品回収や産廃処理が本業なら、基本はゴミの収集が中心。リサイクルショップや便利屋なら、業務の一環として整理も引き受ける、という位置づけです。

一方で、遺品整理を専門にする業者もあります。こうした専門業者は、封筒の中身まで一つひとつ開けて、必要なものか不要なものかを丁寧に仕分けてくれるそう。というのも、確認せずに書類を捨ててしまうと、あとの相続手続きで困るからです。買い取りはしてくれても仕分けまではしない業者もあるので、「何を一番してほしいのか」を先にはっきりさせておくことが大事だと感じました。

失敗しない業者選びのコツ

見積もりで失敗しないために、私が学んだポイントを挙げてみます。

まず、必ず現場に来てもらうこと。ネットの簡易見積もりは「◯LDKでいくら」という目安にすぎず、実際に部屋を見てもらわないと正確な金額は出ません。業者は部屋ごとに遺品の量を確認し、トラック何台分かで料金を算出します。駐車スペースの有無、エレベーターの有無、周辺環境によっても金額は変わるのだとか。

その場で、何日かかるか、立ち会いは必要か、一緒に整理できるか、買い取りは可能か、最後に簡単な掃除までしてくれるか、追加料金が発生する場面はあるか——気になることは遠慮なく聞いておきましょう。見積もりを取るのは多くても二社くらいがちょうどいいそうです。たくさん頼みすぎると、かえって迷って決められなくなるからです。

どの業者が向いているかは、状況しだいです。たとえば遺品が少なく、防犯面が心配なら、不用品だけ運んでくれる回収業者で十分かもしれません。逆に遺品が多く、そのあと空き家になるなら、本格的に入ってもらうほうが安心でしょう。依頼を決めたら、必ず契約書を交わすこと。これは自分を守るためにも欠かせません。

そして大切なのが、業者は相続に必要な書類をすべて把握しているわけではない、という点。大事なものは自分たちであらかじめ分けておくのが鉄則です。元気なうちに重要書類の保管場所を決めておくだけでも、残される家族はずいぶん助かるはずです。

「グリーフ」という、心の揺れ

ここからは、遺品整理の裏で起きている心の話です。「グリーフ」という言葉をご存じでしょうか。日本語でいえば「喪失の悲しみ」。大切な人を失ったあとに訪れる、心身の大きな揺らぎのことです。

葬儀の最中は慌ただしくて実感がわかなくても、時間がたつにつれ「もういない」という現実がじわじわと押し寄せてきます。すると、体にも、感情にも、行動にも影響が出てくる。理由もなく涙が止まらなくなる人、怒りっぽくなる人、何もする気が起きなくなる人もいれば、逆に動き回らずにいられなくなる人もいます。現れ方は本当に人それぞれです。

つらさのあまり遺品をすべて捨ててしまい、数年たってから「残しておけばよかった」と悔やむ人もいるそうです。悲しみの渦中にいるときと落ち着いたあとでは、ものの見え方がまるで違う。だからこそ、こういう心の状態があると知っておくこと自体が、自分や周りを守る支えになるのだと思います。ちなみに、ペットを失ったときにも同じような状態が起こり得るそうです。

悲しみの回復には、時間と個人差がある

グリーフがやわらぐまでの時間には、大きな個人差があります。一般には、最初の半年ほどで状態がぐっと落ち込み、その後ゆっくりと受け止められるようになっていくといわれます。ただし一周忌や三回忌といった節目が来ると、また気持ちが沈む。その波を何度も繰り返しながら、少しずつ回復していくものなのだそうです。立ち直りの早さで人を測るようなことは、決してしてはいけないと感じました。

厄介なのは、こうして心身が揺れている最中に、相続手続きという難しい作業を進めなければならないことです。専門用語ばかりで、ただでさえ理解が大変なのに、悲しみのなかでは何度説明を聞いても頭に入らない、ということが起こります。

相手の悲しみに、そっと寄り添う

もし周りに大切な人を亡くした方がいたら、思いやりのある接し方を心がけたいものです。大事なことは紙に書いて、字を大きく、行間を空けて渡す。「わからなくなったらこれを見て、それでも不安なら連絡してくださいね」と一言添える。重要な決断のときは、誰かもう一人に同席してもらう。こうした小さな配慮が、相手の負担を大きく軽くします。

話の途中で涙があふれてしまう人もいます。そんなときは、急かさず、ただ耳を傾ける。落ち着いた頃合いを見て「少しだけ先に進めても大丈夫ですか」と、そっと確認する。亡くなった方を「故人」と機械的に呼ぶより、お名前でお呼びするほうが、遺族の心に寄り添えることもあるそうです。通帳ひとつ預かるにも、遺族にとっては大切な遺品。両手で受け取り、「拝見してもよろしいですか」と一言かける——そんな丁寧さが、悲しみのなかにいる人を静かに支えるのだと学びました。

遺品整理も、グリーフも、いつか誰もが向き合うことかもしれません。知識として知っておくだけで、いざというときの心の備えになります。もし「終活や相続を、家族のために少しずつ準備しておきたい」と感じたら、入門書やエンディングノートから始めてみるのもおすすめです。私も一冊手元に置いてから、漠然とした不安がずいぶん和らぎました。気になる方は、下のリンクから内容だけでものぞいてみてください。

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