誤解だらけの「年収の壁」を整理。社会保険の対象拡大で何が変わる? ♯269

パートで働く人なら、一度は「年収の壁」という言葉に頭を悩ませたことがあるはずです。私の周りでも「結局いくらまで働けばいいの?」という声をよく聞きます。実はこの話、壁がいくつもあって混同されがち。さらに制度改正で中身も動いているので、この機会に自分なりに整理してみました。

「壁」は一つじゃない、が混乱のもと

最大の誤解は、「年収の壁」を一つだと思い込んでしまうこと。実際には、税に関わる壁と社会保険に関わる壁があり、それぞれ別物です。しかも改正でラインが動いているものもあるので、ひとくくりに語ると話がこんがらがります。

ざっくり分けると、まず住民税が発生し始めるライン、次に社会保険への加入が関わってくるライン、そして扶養する側が配偶者控除や扶養控除を受けられるかどうかのライン——というように、段階的にいくつもの分岐点が並んでいるイメージです。「税の壁」と「社会保険の壁」をごちゃ混ぜにしないことが、理解の第一歩だと感じました。

税の壁は、近年の改正で引き上げられてきた

税に関わる壁は、ここ最近の税制改正で見直しが進んでいます。住民税が発生し始めるラインや、扶養する側が控除を受けられるかどうかの分かれ目が、それぞれ従来より上に引き上げられました。配偶者特別控除を満額受けられるかどうかの境目も同様です。「昔の数字のまま」で覚えていると判断を誤りかねないので、ここは最新の金額を必ず確認したいところです。

社会保険の壁は、撤廃の方向へ

今回いちばん大きく動いたのが、社会保険に関わる壁です。これまで短時間で働く人が社会保険に加入するかどうかは、企業の規模や賃金の水準など、いくつかの条件で決まっていました。

改正では、このうち企業規模の条件や賃金の条件が見直され、最終的には「週の労働時間が一定以上」「学生でない」といった要件が中心になっていく方向です。背景には、最低賃金の上昇があります。賃金が上がっていくと、同じ時間働くだけで従来の賃金ラインを自然に超えてしまうため、賃金を基準にした壁そのものの意味が薄れてくる、というわけですね。

ただし企業規模の条件をすべてなくすのは、中小企業にとって保険料負担が一気に重くなる話でもあります。そのため、対象となる企業は長い時間をかけて段階的に広げていく予定とされています。あわせて、これまで一部の業種に限られていた個人事業所への適用も、対象が広がる方向で見直されました。

「手取りが減る谷」の先にあるメリット

こうした拡大に対しては、「手取りを減らしたくないから、かえって働く時間を抑えてしまうのでは」という心配や、中小・個人事業の負担増を懸念する声もあります。そこで、新たに対象となる人や事業主を支える、期間限定の負担軽減策も用意されています。

もちろん、社会保険料を払う分だけ目先の手取りは一時的に減ります。けれど、その「谷」の先には見逃せないメリットがあるのも事実です。厚生年金に入れば将来受け取る年金が増えますし、健康保険から傷病手当金や出産手当金といった給付を受けられるようにもなります。

とくに、これまで国民年金や国民健康保険を全額自分で払っていた人にとっては、勤め先が保険料を半分負担してくれる形になるため、同じ働き方でも負担が軽くなる可能性があります。今回の対象拡大で新たに加入する人のなかには、こうした立場の人がかなりの割合を占めるとされ、影響は決して小さくありません。

「壁」を、働き方を見直すきっかけに

どうしても「目先の手取りが減る」ことばかりに目が向きがちですが、私はこの改正を、自分のライフプランと働き方を見つめ直す良い機会だと捉えています。

たとえば「本当はもっと働いて世帯の収入を増やしたい」という気持ちがあるなら、負担を抑える支援策が使えるうちに、思い切って壁を越えてしまうのも一つの選択です。さらに、社会保険に加入するタイミングは、加入している民間の保険を見直す絶好の機会でもあります。会社の保障が手厚くなる分、重複している民間保険を整理できることも多いからです。

大切なのは、短期的な損得だけでなく、長い目で見て自分や家庭にとってどうかを考えること。私自身、この制度を学び直すなかで、家計と働き方を結びつけて考える入門書にずいぶん助けられました。「自分はどの壁を意識すればいいのか整理したい」という方は、下のリンクから内容だけでものぞいてみてください。働き方を考えるきっかけになるはずです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました