不動産は、ただ持っているだけでは意味がありません。「住む」「貸す」「売る」といった利活用ができてこそ、はじめて資産としての価値を発揮します。ところが現実には、さまざまな理由で活用も処分もできない物件が数多く存在するのです。こうした「貸せない・売れない不動産」を、ここでは「問題不動産」と呼ぶことにしましょう。
警戒すべき「ビッグ3」――境界・名義・道路
数ある要因の中でも、特に厄介なのが境界・名義・道路の3つです。
境界があいまいだと、測量も境界確認書の取得もできず、売却や建て替えの手続きがそこで止まってしまいます。
名義の問題はさらに深刻です。相続登記をしないまま放置すると、世代を重ねるごとに相続人がねずみ算式に増えていきます。あるケースでは、40年前に亡くなった祖父名義のままだった土地の相続人が35人にまで膨らみ、全員の同意を得るのに21年もかかったといいます。
そして道路。建築基準法では、敷地が幅員のある道路に2メートル以上接していなければ建物を建てられない「接道義務」が定められています。これを満たさない土地は「再建築不可」となり、いざ売ろうとした段階で「実は建て替えられない土地だった」と発覚することも珍しくありません。
このビッグ3以外にも、容積率オーバーの違法建築、共有名義のもつれ、越境、土壌汚染、さらには修繕積立金が不足した高経年マンションなど、問題の芽は至るところに潜んでいます。
「違法」と「実務上の支障」は分けて考える
問題不動産は、大きく2つに整理できます。法律に違反している不動産と、違法ではないけれど実務上の支障が大きい不動産です。
法的な問題――違法建築と既存不適格
接道義務違反や違法建築は、前者の典型です。庭に10平方メートルを超える増築をする際は本来建築確認が必要ですが、「このくらいなら」と申請を省くと、それだけで違法状態に陥ります。昔は手続きや登記の運用が緩やかだったため、こうした物件は意外と多いのですね。そして売買時やローン審査の段階で、問題が一気に表面化するわけです。
これと混同しやすいのが「既存不適格」です。建築当時は合法だったものの、その後の法改正で現行基準に合わなくなった状態を指します。これ自体は違法ではなく住み続けられますが、建て替え時には「同じ規模では建て直せない」という制約を受ける場合があります。
解決は早いほど有利――時間が敵になる問題
境界や相続登記の問題は、放置するほど解けにくくなります。2024年4月から相続登記が義務化されましたが、長年放っておかれた土地では相続人が数十人に達し、中には行方不明者がいることも。先の21年のケースは解決できただけまだ幸運で、途中で頓挫する例も後を絶ちません。どうしても境界が定まらない場合は筆界特定制度や境界確定訴訟という手もありますが、時間も費用もかかります。そこに至る前の対処こそが肝心です。
問題不動産を「買わない・残さない」ために
これから買う人がチェックすべきこと
土地を見るなら、まず境界杭と「境界確認書」の有無です。これらが揃わない、隣地と関係がこじれて立ち会いに応じてもらえない――こうした物件は要注意と考えましょう。
建物は新築と中古で着眼点が変わります。新築なら、完了検査を経て交付される「検査済証」が必須。これがない物件は避けるのが無難です。中古では検査済証がそもそも存在しないことも多いため、ホームインスペクション(建物状況調査)を専門家に依頼するのがおすすめ。長く住む家を見極めるための、価値ある必要経費といえるでしょう。あわせて住宅性能評価書や長期優良住宅の認定なども確認すると安心です。
立地面では、ハザードマップで災害リスクを必ず確認を。建物が頑丈でも、リスクの高いエリアは将来の資産価値に影響します。契約前の重要事項説明書も、わからない点は遠慮なく質問しましょう。投資用であっても、現地に足を運ぶことを強くおすすめします。
すでに持っている人がやるべきこと
所有者には「不動産の健康診断」をおすすめしています。境界杭は揃っているか、相続登記は済んでいるか、無断の増築はないか――気になる点は早めに専門家へ。問題は自分の代で片づけ、子ども世代に「きれいな不動産」を残すことが、親の責任ではないでしょうか。
なお、使わない土地を国に引き取ってもらう「相続土地国庫帰属制度」もありますが、その条件の一つが「境界の確定」です。境界を放置すれば、売ることも国に渡すこともできない、行き場のない不動産になりかねません。問題は時間とともに複雑化し、コストも膨らみます。境界・名義・道路を軸に、早めの点検を心がけたいものですね。

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