長生き時代の安心づくり――公的年金を上手に増やす2つの方法 ♯285

「人生100年時代」と耳にする機会が増えました。長く生きられるのは喜ばしいことですが、その分、老後の暮らしを支えるお金への備えが欠かせません。ここで頼りになるのが公的年金です。実はこれ、単なる貯蓄ではなく、長生きや物価上昇のリスクに備える「保険」としての役割を持っているのですね。

では、その年金を増やすにはどうすればよいのでしょう。大きく分けると、戦略は2つあります。

戦略1:長く、しっかり稼いで働き続ける

まず一つめは、厚生年金に加入しながら、できるだけ長く、そして高い収入で働くことです。国民年金は満額納めても受給額が一定(2025年度で約83万円)ですが、厚生年金は加入期間と収入の両方が反映されます。つまり、働いた分だけ将来の年金に上乗せされるわけです。

現在は65歳までの就労機会確保が義務化されていますが、再雇用などでさらに長く働く選択も、年金を増やす有効な一手といえるでしょう。

戦略2:受給開始を遅らせる「繰り下げ受給」

もう一つが、年金を受け取り始める時期を後ろにずらす「繰り下げ受給」です。1カ月遅らせるごとに0.7%ずつ増え、75歳まで繰り下げれば最大84%もアップします。これは収入や働き方を問わず、誰でも実践できる方法なのが魅力です。

増えた年金は、およそ12年受け取ると65歳開始の総額を追い越す計算になります。長生きするほど得をする仕組み、と言い換えてもよいでしょう。

繰り下げの「落とし穴」にも目を向けて

ただし、いいことばかりではありません。年金額が増えると所得も増え、所得税・住民税や国民健康保険料の負担が膨らむ可能性があります。場合によっては医療費の窓口負担割合が上がることも。手取りベースで考えると、額面の増加がそのまま手元に残るとは限らないのです。

そこで活きるのが、きめ細かな工夫です。たとえば年下の配偶者がいる場合、厚生年金を繰り下げると「加給年金」が止まってしまいます。これを避けるには、厚生年金は65歳から受け取り、基礎年金だけを繰り下げるという手があります。夫婦それぞれの状況、とりわけ長生きしやすい側を重点的に繰り下げるなど、世帯ごとの最適解を探ることが大切ですね。

年金は「使う」ために増やす

最後に発想の転換を一つ。老後資金というと「いくら貯めれば安心か」と不安が先に立ちがちです。けれど本当に大事なのは、蓄えたお金を元気なうちに有意義に使うこと。

終身で受け取れる年金という土台を厚くしておけば、預貯金やNISAは安心して取り崩し、旅行や趣味に回せます。繰り下げ中の生活費は、掛金が全額所得控除になるiDeCoなどで補うのも賢い選択でしょう。

厚生年金は65歳受給開始なら約18年で払った保険料を回収できる設計です。過度に恐れず、制度を正しく理解して活用する――それが、安心で豊かな老後への近道なのではないでしょうか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました