高齢者施設を検討するとき、押さえるべき軸は大きく「費用」と「施設の種類・体制」の2つです。まずはお金の話から見ていきましょう。
施設費用は「本人が払う」が大原則
最初に心に留めておきたいのは、費用は入居する本人が負担するのが基本だということ。親が入るなら親のお金で、親の経済力に見合った施設を選ぶ――これが鉄則です。
「年金が少ないから子が一部を出そう」と考える方は少なくありません。けれど、これには思わぬ落とし穴があります。施設で何年暮らすかは、誰にも予測できないからです。「男性ならせいぜい5年くらい」と見積もる方も多いのですが、入居後に栄養状態が整い、お酒も減って、かえって長生きされるケースは珍しくないのですね。
長生きはもちろん喜ばしいこと。ただ、その分だけ子世代の負担が膨らみ、光熱費や食材費の値上がりも重なれば、月3万円のつもりが4万、5万円へ。期間も5年が7年、8年へと延びていけば、子自身の老後資金まで危うくなりかねません。
まずは親の年金と資産を確認しましょう。年金は毎月の費用に、資産は一時金や不足分の補填に充てるのが基本です。お金の話は切り出しにくいものですが、ここを避けては施設選びの一歩が踏み出せません。経験上、親が頑なに話そうとしない場合、資産が極端に少ない、あるいは借金を抱えているといった可能性もあり、要注意です。
「100歳まで保つか」を基準に身の丈で選ぶ
資産と年金を把握したら、その範囲で無理なく暮らせる施設を探します。毎月の月額利用料は年金でまかなうのが基本。預貯金を取り崩す場合も、長生きや値上がりを見込んで余裕を持たせたいところです。「年金で足りない額×12カ月×年数」が取り崩し総額の目安になります。年数は読めませんから、平均寿命に10年ほど上乗せし、女性なら95〜100歳、男性なら90〜95歳を想定しておくと安心でしょう。
加えて、お小遣いや衣服費、通信費といった私的費用も忘れずに。月3万円でも3年で100万円を超えます。高級施設ではオペラ鑑賞などに数万円かかることもあり、経済力に見合わない施設を選ぶと、後々無理が生じやすくなります。
入居一時金との上手なつき合い方
有料老人ホームなどでは、家賃の前払いにあたる「入居一時金」がかかるのが一般的です。金額は数十万円から数千万円まで施設ごとに大きく開きがあります。
払うべきか、いくらまで払うか
一時金を多く払えば月額利用料は抑えられ、長生きしても追加請求はありません。つまり長く暮らすほど前払いが有利、短ければ月払い中心が有利、という関係になります。70代で元気なうちなら前払いも一案ですが、80代半ば以降や持病がある場合は、ゼロや一部前払いを検討するのが無難でしょう。
ただし資産を減らしすぎると、いざという時に不安が残ります。一時金は総資産の3分の1程度までに抑えるのが目安です。自宅売却で充てる手もありますが、施設生活に慣れるまでは自宅を残し、「慣れたら売却して一時金に切り替える」と途中でプランを変える方法もあります。なお一時金には償却期間があり、初期償却分(15〜30%程度)はクーリングオフ期間を過ぎると戻りません。
お金がなくても入居の道はある
「親のお金だけでは入れない」と諦める必要はありません。たとえば特別養護老人ホーム(特養)は入居一時金が不要で、月額は7万〜25万円が目安。福祉目的のため低所得者への「補足給付」という軽減措置もあります。同じ要介護5でも、年金160万円・貯蓄800万円のAさんは月14万円台、年金70万円・貯蓄300万円のBさんは7万円台と、ほぼ半額になる例もあるほどです。費用を抑えられるケアハウスもありますし、年金も貯蓄もなければ生活保護を受けて特養に入る道も。「お金がないから自宅介護しかない」と思い詰める前に、こうした選択肢があることをぜひ知っておいてください。
健康状態と「最期の望み」も選ぶ基準に
施設選びは費用だけでは決まりません。介護の必要度によっても選択肢は変わります。特養は要介護者向けですが、サ高住やシニア向けマンション、有料老人ホームは自立から要介護まで幅広く対応します。
医療への対応力も重要です。対応できる医療行為は施設ごとに大きく異なり、医療連携の手厚いメディカルホームもあります(数は少なく高額になりがち)。自立度に応じて住み替える前提でプランを描いておくと安心ですね。
そして見落とせないのが看取りです。施設での最期を望むなら、救急搬送せずに看取る体制が整っているか、これまで何人を看取ってきたかなど、実態をしっかり確認しましょう。
ある方は「いいことが多い施設より、いやなことが少ない施設がいい」と語っていました。体が不自由になるほど、イベントを楽しむ余力は減り、逆に不便な点ばかりが気になってくるからです。何を望むのかを整理し、早めに備えること――それが後悔しない施設選びの鍵といえるでしょう。

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