介護・施設シリーズの初回となる今回は、なぜFPが高齢者施設の知識を持つべきなのか、そして更新しておきたい最新情報について、私自身の見学経験を交えてお話しします。
なぜFPが施設を知る必要があるのか
私はこれまで400回近く高齢者施設を見学してきました。FP仲間と研究会を作って学んだり、同業の方々を誘って見学を続けたりするなかで痛感しているのが、「FPこそ施設を知るべきだ」ということです。
老後のお金に不安を抱く人は多く、終活への関心も高まっています。それでも、自立した生活が難しくなったときの暮らし方や費用までは、ほとんどの方が具体的に描けていません。
実際、「在宅介護が限界だけど施設に入るお金がない」「有料老人ホームに入ったが毎月の支払いが厳しい」といった、いわば介護破産寸前の相談も増えているんです。自立を前提としたプランニングだけでは不十分。だからこそ、どんな施設があり、いくらかかるのかという知識が欠かせません。介護は始まると終わりが見えにくい一方、医療と違って事前に準備し自分で選べる領域。そこにFPがお手伝いできる余地が大きいのです。
古いイメージは要アップデート
「特養は要介護3以上、しかも安いから入所待ちが長い」——そう思い込んでいませんか。
実は要介護3未満でも、認知症で日常生活に支障があり、介護できる同居家族がいないなどの事情があれば入所可能なケースがあります(厚労省指針)。順番待ちも、都市部を除けば空きのある施設も少なくありません。
「安い」という認識も実態とは少し違います。資産が一定基準を超えると、居住費・食費を補助する「補足給付」が受けられないからです。年金収入などが120万円超の場合、単身で資産500万円超、夫婦で1,500万円超だと対象外。すると自己負担が膨らみ、地域によっては「特養+1〜2万円」で有料老人ホームに入れることもあります。こうした事情を知っておくだけで、相談者に示せる選択肢がぐっと広がるわけです。
「2回の住み替え」を想定しておく
プランニングで頭に入れておきたいのが、施設は住み替えが必要になる場合があるという点です。
一つは医療行為が理由のケース。ある方は住宅型有料老人ホームに入所後、入院して胃ろうを造設。元の施設では栄養注入に対応しておらず、看護師が24時間常駐する介護付有料老人ホームや特養を探すことになりました。どんな医療行為に対応できるかは施設ごとに異なるので、重要事項説明書などで事前確認が大切です。
もう一つは、自立段階で入り、要介護になったら移るケース。ある方は急病への不安からサービス付き高齢者向け住宅へ転居し、見守りや食事提供を受けながら快適に暮らしつつ、いずれ特養などへ移る予定です。サ高住なら入居費用は数十万円程度。資金に余裕があれば分譲型シニアマンションも選択肢になります。
早めの準備が満足度を高める
施設探しは「必要になってから」では遅いんです。切羽詰まってから探すと「とにかく入れるところ」という選び方になり、後悔につながりがち。「もっと早く動けばよかった」と漏らす相談者は本当に多いですよ。
在宅介護を続けている方も油断は禁物。介護度の上昇や介護者の体調変化で続けられなくなることもありますし、ヘルパー不足は地方ほど深刻です。在宅を否定するわけではありませんが、施設という選択肢も知っておくべきでしょう。
ケアマネージャーは多忙で民間施設まで把握しきれないのが実情。結局は自分で集めるしかなく、自分で探した人ほど満足度が高い傾向があります。できれば65歳、遅くとも70歳から動き出すのがおすすめです。
FPが地元周辺の施設情報を持っていれば、相談者は候補を絞って見学・比較できます。これは正直、ビジネスとしてぽっかり空いている分野。最期の時間を過ごす場所だからこそ、満足度の高い施設選びを支えられるFPが増えてほしいと心から願っています。

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