退職金は「ギリギリで慌てる人」が続出
退職金や企業年金は、公的年金に次ぐ老後資金の大黒柱。にもかかわらず、自社の制度を前もって把握している人は驚くほど少ないのが実情です。
受け取り方は会社によってさまざま。一時金で一括受け取る方法、年金として10年・15年と分割で受け取る方法、終身で受け取る方法など、選択肢は多岐にわたります。どれを選ぶかで総額も変わるため、「どうすればいいの…」と頭を抱える人が大半です。
しかも、制度の説明があるのは早くて定年の2〜3か月前、なかには1か月前というケースも。「複雑でよくわからないまま、慌てて相談に駆け込む」——そんな方が後を絶ちません。
まず押さえたい「課税のしくみ」
受け取り方を考えるうえで欠かせないのが、税金と社会保険料の知識です。受け取り方次第で、所得の種類も課税方法もガラリと変わります。
一時金で受け取る場合は「退職所得」となり、強力な退職所得控除が使えます。しかも他の所得と合算されない「分離課税」で、社会保険料もかかりません。
控除額は勤続20年以下が年40万円、20年超の部分は年70万円。たとえば23歳で就職し60歳で退職(勤続38年)なら、控除は「40万円×20年+70万円×18年=2,060万円」。一時金が2,060万円までなら税金ゼロです。仮に3,000万円でも、控除を超えた分のさらに半分しか課税されません。この大きな控除枠を使い切ることが、受け取り方を考える最大のカギになります。
年金で受け取る場合は「雑所得」となり、公的年金等控除が使えます。ただし公的年金などと合算され、「総合課税」のため給与があれば税率が上がることも。社会保険料の対象にもなります。
2,000万円ならどっちが有利?
勤続38年・退職金2,000万円のケースで試算してみましょう(年金受け取りは10年分割・運用率2%、60代前半は年収350万円で就労、65歳から公的年金220万円と仮定)。
額面では、運用益が乗る分だけ年金受け取りのほうが多くなります。ところが手取りで見ると逆転します。一時金は退職所得控除で課税ゼロ・社会保険料もなし。一方の年金受け取りは控除超過分が課税され、リタイア後は社会保険料も発生します。結果として、手取りでは一時金受け取りのほうが有利になりやすい——これが長年の相談現場での実感です。
ただし運用利率や働く期間によって結論は変わるため、自分の状況で試算することが何より大切です。
「得か損か」だけで決めないで
相談者の関心はやはり「どう受け取れば得か」。でも、手取りが多い選び方が必ずしも正解とは限りません。本当に大事なのは、60歳以降も安心して暮らせること。ライフプランに合った受け取り方こそが正解なのです。
一時金を手にして気が大きくなり浪費してしまう人、「増やさなきゃ」と焦って無謀な投資に走る人(いわば“運用病”)も少なくありません。そうした方には、一時金と年金を半々にするなど、状況に応じた提案が有効です。
また、退職金を一時金で受け取って住宅ローンを繰り上げ返済し、老後の負担を軽くするのも賢い一手。いつまで働くか、リタイア後の収支はどうかを見据えて、自分に合った受け取り方を選びましょう。

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