【2025年金改正をやさしく解説】話題の「基礎年金底上げ策」と財政検証の見方 ♯237

5年に一度の改正、今回の主役は「基礎年金の底上げ」

年金制度は5年ごとに見直されるルールがあり、2025年はまさにその改正の年。6月13日に「年金制度改革法」が成立しました。今回の最大の焦点となったのが、すべての人が老後に受け取る老齢基礎年金(国民年金)の水準を引き上げる「基礎年金底上げ策」です。

2025年度の老齢基礎年金は満額で月およそ6.9万円。前年より1.9%増えたとはいえ、「マクロ経済スライド」という調整の仕組みが働くため、物価上昇を考えると実質は目減りしているのが実情です。とくに将来の低年金が心配されるのが、基礎年金頼りの自営業者と、非正規雇用が多かった40〜50代の「就職氷河期世代」。こうした層を支えようとして生まれたのが、今回の底上げ策でした。

なぜ議論が紛糾したのか

底上げの財源は、厚生年金の積立金と税金(国庫負担)。ところが厚労省の試算では、2026〜2045年度にかけて会社員の年金が現行より一時的に減る(最大で月7,000円減)という結果に。「厚生年金を基礎年金に流用するのか」「世代間の不公平だ」といった反発が与党内からも噴出し、いったん法案から削除される事態になりました。その後、野党の求めで再び盛り込まれ、二転三転の末に成立——という波乱の展開だったのです。

「財政検証」は年金の健康診断

改正案の土台になったのが、2024年の財政検証。人口や経済の見通しをもとに将来の給付水準を試算するもので、いわば年金の健康診断です。

その指標となるのが所得代替率。現役男性の平均手取りに対して、モデル世帯(夫婦2人)の年金がどれくらいの割合かを示します。2024年度は61.2%。つまり「現役男性の手取りの約6割が年金でもらえる」状態です。これが50%を割り込むと危険水域とされ、制度の抜本的な見直しが避けられなくなります。

横ばい経済なら、基礎年金は約3割減

検証は4つのシナリオで行われましたが、最も現実的とされるのが「過去30年投影ケース」。これによると所得代替率は2057年度に50.4%まで下がります。

注目すべきは内訳です。厚生年金(報酬比例部分)の調整は2026年度に終わり水準はほぼ維持される一方、基礎年金の調整は2057年度まで続き、水準は現状より約3割も低下する見込み。報道でよく聞く「横ばい経済なら基礎年金は3割減」とは、この部分を指しています。底上げ策は、この調整終了時期のズレを利用して厚生年金側から財源を回す仕組みなのです。

「モデル世帯」という前提に注意

ここで知っておきたいのが、所得代替率が「会社員の夫+専業主婦」というモデル世帯で計算されている点です。共働きやシングルが増えた今、現実とのズレは大きく、自分の年金額を考えるうえでは参考になりにくい面があります。

なお実際に底上げを発動するかは、5年後の2029年の財政検証を踏まえて判断されることに。試算では、男性は1963年度生まれ以降、女性は1959年生まれ以降が恩恵を受ける一方、それより上の世代はマイナスになるとされます。要は、いま年金を受け取る世代に少し我慢してもらい、氷河期以降を支える構図といえるでしょう。

まとめ:制度任せにしない「自分年金」の発想を

人口増は望めず、経済成長も楽観できないなか、公的年金だけに頼る老後設計はますますリスクが高まっています。「もらえる年金が減るかもしれない」前提で、早めに自分で備える視点が欠かせません。NISAやiDeCoなどを活用した資産形成、家計の見直しを、今のうちから少しずつ始めておきたいところです。

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